第9回「私が歩んだキャリアパス」講演会報告

 「私が歩んだキャリアパス」講演会は、回を重ね今年は9回目。2019年10月10日(木)15時30分より首都大学東京南大沢キャンパス11号館105号教室で開催されました。会場は例年お借りしていた100人超の教室が大学院入試日と重なり借りられず、70人教室となりましたが、そこに60人近くに参加者となり、少し手狭な場所でした。講演会はM1のキャリアパス講演会担当同窓会役員の進行で、講師の方々と聴衆がとても近い距離で行われました(写真1,2)。 

 出席者はM1を中心に学部生や博士課程院生、更に大先輩OBまで広がっていました(写真1とグラフ1)。 またこの講演会の開催を知るきっかけでは友人からの情報やポスターからに加えて、教員や講義での紹介といったルートも確認され、今後も教員と連携した啓発を進められれば良いと思います。(グラフ2)。 

 さて、今回は以下の3人の講師に依頼しました(写真3)。
◇ 飛永 駿氏:三井・ダウ ポリケミカル株式会社 テクニカルセンター製品開発グループ
  首都大学東京大学院 2017年 修士修了 久保研     
◇ 安藤 慧佑氏:一般財団法人 日本自動車研究所 電動モビリティ研究部
  首都大学東京大学院 2013年 修士修了 2018年 博士取得(社会人ドクター)金村研     
◇ 石田 洋平氏:北海道大学大学院工学研究院 助教
  首都大学東京大学院 2011年 修士修了 2013年 博士取得 高木研

 講演のトップバッターは飛永さん、演題は「企業で求められる研究開発の在り方とは」で、修士課程でイギリスバーミングハム大学への留学の機会を積極的に活かし、そこで得た経験を研究に就活に、そして現在に続く道のりを現役学生が引き込まれる迫力ある内容で話を進められました。

 社会人2年目にも関わらず、既に企業研究開発の本質を理解された、飛永さんの言葉での学生への語りは、彼らが近い将来企業研究開発者に巣立った時に反芻すると、とても味わい深い言葉となったでしょう。また留学時期が就活スタート時期に重なった難関への対処も、以前キャリアパス講演会(第7回2017年開催)で講師をされたNIMS勤務江口さんの講演での一言「チャンスの女神は前髪しかない(伝Leonardo da Vinci )」を実践されたとのお話は、講演会主催側にも響いた一節でした。
 2番バッターは安藤さん、演題は「運命だったキャリアパス」で、高校3年生の時に親御さんに勧められて鑑賞したTV番組サイエンス ZEROで紹介されたリチウムイオン電池の技術紹介と安藤さんに纏わる運命の糸を物語風に紹介頂き、聴衆を魅了しました。

 高校生の頃から自動車関連の職種に就くことを思い描いている中、専攻は機械系と考えている時に、この番組で紹介された、車載電池開発は首都大金村研で行われているのでそこで勉強したいとの目標を立て、大学入学、研究室配属と進まれました。就活でも一旦電池業界に決まりかけていた進路を、自らリクナビに無いJARIに 押しかけ就活 を進め、また社会人ドクターとして再び金村研の門を敲いて博士取得、現在に至る道のりは、キャリアとは、何か運命めいていることと感じた学生聴衆も多かったのではなかったでしょうか。また、上映されたビデオは安藤さんが高校生の時に鑑賞したそのものが、就職先のJARIの研究部長が出演した縁で、JARIに保管されていたものを当日お持ちいただきました。これもキャリアパス講演会の講師に結び付く「縁」を感じざるを得ませんでした。
 そして3人目、石田さんが登壇、演壇は「大学教員という仕事の実際と人生の選択を自分一人でするということについて」でした。大学院・助教での多くの留学により獲得したものベースに、岐路に立った時に人生の選択は自分自身1人で一生懸命に考えることの大切さを経験も交えた熱演で学生に訴えてくれました。

 首都大学大学院での院生時代の研究生活、博士取得後に直ぐに北海道大学で5年任期助教として赴任、今年パーマネントの助教に採用された経緯の中で、アカデミア研究者としての生きざま、そして自分を成長させるためには自らがその環境に積極的に身を置くことの大切さをトクトクとお話頂きました。また博士習得後のキャリアパスの様々な可能性を純アカデミア(大学教職)ばかりでなく、企業での博士採用動向や大学URAや技術者、サイエンスコミュニケーターといった世の中に必要とされている博士について具体的に紹介頂きました。
 終了後に集めた学生からのアンケートにおいても、 「社会人目線での学生生活の意義について知れた」 「様々な経験や経歴のお話を聞くことが出来た」 「学生時代の話から就活の話まで聞けて自分の将来について考えやすくなった。」 「研究室と会社での研究開発の違いや今の生活のアドバイスが聞けた。」 「先輩OBの方のお話が聞けたのは本当に貴重でした」 と大変好評でした。 学部学生からは、「社会人として働いている方の実情を聞くことができた点が良かった」 「先輩方の話を聞けて有意義な時間となった。」 「とにかく面白かった、来年も行きたい」 「来年もよろしくお願いします。」 と早くも次回の開催を促すご要望もいただきました。
 
 主なアンケートの結果は以下です。

 講演終了後、隣接するカフェテリア館で懇親会が18:00~20:20に開催されました。会長で院生の松澤さんの乾杯の音頭に始まりOBを囲んでの賑やかな懇親会が行われました。また、大先輩高見澤さんより「起業の進め」へのエールを力強いお言葉を頂き、首都大学・都立大学発スタートアップへの期待を頂きました。最後に、副会長院生の二村さんの中締めでネットワーキングが終了しました。

 今回の講演会開催にあたり、講演者にはもちろん、大学内のPRや会場の設定などに尽力いただいた立花教授に、大変お世話になりました。ここに心からお礼申し上げます。
 
(キャリアパス講演担当 江崎敦雄 記 :東京都立大学工化1978年卒、1980年修士修了)